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コーヒーの明日を支える鍵となる新品種の誕生

 今回ご紹介する「スターマヤ」の誕生は、さかのぼること1927年、
当時ポルトガル領であった東ティモールで見つかった 「ハイブリッドティモール種」 から始まります。
ハイブリッドティモール種は、偶発的な突然変異により染色体(DNA)の数がアラビカ種と同等になったカネフォラ種と在来のアラビカ種との自然交配によって誕生した異種間交配種です。

 この品種は、親となる両品種が持つ特徴を受け継ぎ、多収で耐病性に優れた品種であり、このハイブリッドティモール種の発見により、コーヒーの品種改良は飛躍的に進歩し、現在の主要な栽培品種の祖先にもなっています。 
 「スターマヤ」はこのハイブリッドティモール種の系統を受け継ぐ マルセレサ種 (*1)を一方の親に持ちます。マルセレサ種は、さび病への耐性があり、樹高が低く生産性の高い「矮性(*2)」(わいせい)という特徴を持ちながら高品質な味を実現できる品種です。
 さらに、2001年のエチオピア/スーダン由来アラビカ「突然変異種の発見」が「スターマヤ」誕生の大きな鍵となりました。
 フランスに本部を置くCIRAD(*3)とコーヒー専門商社のECOM社が、官民共同で行う品種改良プロジェクトの中で、ニカラグアの試験農場La Cumplidaで「雄性不稔」という特性を持つ突然変異種を発見。
 雄性不稔とは、花粉を作らず、自家受粉をしない特徴のことで、交配種を作りやすいメリットがあります。
2つの異なる系統の品種を交配して得られるF1品種は、一般に両親のどちらよりも優れた形質を持つという特性を活かし、この突然変異種とマルセレサ種を交配し、種子からの栽培が可能なF1品種(*4)「スターマヤ」が誕生したのです。
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(*1)   マルセレサ種  
1950年代後半にポルトガルのさび病研究所(CIFC)に持ち込まれたハイブリッドティモール種とコスタリカで発見されたブルボン系の変異種(病害虫に弱く、矮性、高品質)であるビジャサルチ種を交配し、1960年代後半にH361という交配種が誕生しました。
そこから派生しT-5296、IAPAR 59、マルセレサとさまざまな品種が開発され、これらを総称し、サルチモール・グループとして現在は分類されています。

(*2) 矮性(わいせい)とは、樹高が低く、枝数も多く、多くの結実が見込まれ、耕作地での樹間を狭く密植することが可能であり、樹高が低いため収穫作業も容易であり生産者にとっても非常に重要な特徴といえます。

(*3) CIRAD(フランス農業開発研究国際協力センター)1984年設立、本部パリ。熱帯および地中海地域の持続可能な開発に取り組むフランスの農業研究および国際協力組織です。

(*4) F1品種とは、 2つの異なる品種を交配して得られる一代雑種のこと。両親の顕性性質だけが現れるため、見た目や性質が均一になる。一般に両親のどちらよりも優れた形質を持つ雑種強勢の特性を示す。但し、スターマヤのさび病耐性は完全なものではなく、約15%は潜性が発現する可能性もある。