サイフォン式コーヒーのおいしいいれ方や器具の種類を解説

自分でコーヒー豆を購入し、コーヒーをいれるのに慣れてくると、サイフォン式コーヒーをいれてみたいと思うようになる方も多いのではないでしょうか。行きつけの喫茶店でサイフォンを使ったコーヒーを飲み、いつかは自分でもと憧れている方もいらっしゃるでしょう。

本記事では、サイフォン式コーヒーを自宅でも楽しみたい方に向け、サイフォン式コーヒーの器具や種類、おいしいいれ方についてお伝えします。

サイフォンとは

サイフォンとは、ギリシア語で「チューブ」や「管」といった意味です。液体が隙間のない管を特定の地点から目的の高い地点へ向かって上っていくメカニズムを「サイフォンの原理」と呼びます。

サイフォンの原理は1800年代初頭、蒸気機関車や蒸気船の登場後に移動手段以外に蒸気の有効活用を進めていくなかで生まれたといわれています。ただ、サイフォン式コーヒーが登場したのは1830~40年頃と少し後です。

サイフォンでいれたコーヒーの特徴

サイフォンは浸漬ろ過法と呼ばれる方法でコーヒーを抽出します。具体的には下から熱せられたフラスコ内の気体が膨張して湯が押し上げられ、上のロートのなかにあるコーヒー粉と接触することで抽出されます。

サイフォンでいれたコーヒーは、蒸気圧を利用し高温で抽出されることで、ドリップ式に比べコーヒーオイルがより多く含まれるため、口当りがまろやかになるのが特徴です。

これに対し、ドリップ式のコーヒーは、時間をかけてゆっくりとお湯を注いで抽出するため、コクがあり飲み応えのある味わいになります。

サイフォン式コーヒーの主な種類

サイフォン式コーヒーを選択する際は、容量以外に熱源の違いを把握する必要があります。熱源は主に「アルコールランプ式」「電気式」「ガスバーナー式」の3種類です。ここでは、それぞれの概要と違いについて解説します。

サイフォンの種類1-アルコールランプ式-

一般家庭では、アルコールランプがもっともポピュラーな熱源です。多くの方が小学生の頃に理科の実験で使ったアルコールランプを熱源としてコーヒーをつくります。

アルコールランプ式のメリットは、ランプの炎を眺めつつ、おいしいコーヒーができあがっていくのを楽しめる点です。

幻想的にゆらゆらと燃える炎が、フラスコのなかのお湯を沸騰させていくのを見られるのは、アルコールランプ式だからこその優雅な時間といえるでしょう。

サイフォンの種類2-電気式-

サイフォン式コーヒーを短時間でつくりたい方には電気式がおすすめです。アルコールランプ式に比べ、お湯の沸騰が早いため、忙しい朝でも時間をかけずにサイフォン式コーヒーを楽しめます。

また、火を使わないため、火災が発生してしまうリスクを低減できるのも大きなメリットです。ロートにお湯が上昇しコーヒー粉と混ざった際の攪拌は必要なものの、お湯が沸騰するまでは他のことをしていても心配ありません。

サイフォンの種類3-ガスバーナー式-

ガスバーナー式はガステーブルとガストーチの2種類がありますが、ガステーブルは業務用のため、家庭用であればガスボンベを使うガストーチがおすすめです。

ガスバーナー式のメリットも火力が安定している上、調節もしやすい点で、電気式同様にアルコールランプよりも短時間でフラスコのお湯を沸騰させられます。

また、風の影響も受けにくいため、最近ではキャンプ場でガスバーナーを熱源としてサイフォン式コーヒーを楽しむ方も増えているようです。

サイフォン式コーヒーのおいしいいれ方

サイフォンでおいしいコーヒーをいれるためには、器具の用意や下準備などをしっかりと行うのがポイントです。ここでは、サイフォン式コーヒーに必要な器具や下準備からコーヒーの抽出まで順を追って解説します。

1.器具を用意する

サイフォン式コーヒーをいれるには、次の9つの器具を用意しましょう。

(1)ロートとフラスコ(スタンド)

フラスコの上にロートをセットし、スタンドで固定します。

(2)熱源

上述した「アルコールランプ」「電気」「ガスバーナー」のいずれかから、好きなものを選択してください。

(3)竹べら

ロートにお湯が上昇し、コーヒー粉もに上がってきた際に攪拌するために使います。サイフォン式コーヒーでは、攪拌によってコーヒーの味が変わるともいわれるほど重要なポイントのため、忘れずに用意しておきましょう。

攪拌するのに竹べらを使用するのは、高温に強い点、攪拌してもロートを傷つけるリスクが小さい点が理由です。また、竹は吸水性が低く、コーヒーの風味を吸収しにくい点でも竹べらをおすすめします。

(4)布フィルター

この後に紹介するろ過器にしっかりと固定するための紐がついたサイフォン式コーヒー専用の布フィルターを用意します。

(5)ろ過器

前述した布フィルターを付け、コーヒーをろ過するために使う器具です。

(6)メジャースプーン

コーヒー粉の量を量るためのスプーンです。通常、すり切りで8~12gを量れるようになっています。日によっていれる量が異なる場合は、1mm単位でメモリがついているものを選択しましょう。

(7)タイマー

1分間を正確に計れるタイマーを用意します。キッチンタイマーでも構いませんし、スマートフォンのアラームを使っても問題ありません。ただ、より喫茶店の雰囲気を出したい場合は、砂時計を使うのもおすすめです。

(8)コーヒーカップ

できあがったコーヒーをいれるためのカップを用意します。デザインや色などお好きなもので構いません。ただし、マグカップにした場合、一般的なコーヒーカップよりも容量が多くなるため、コーヒー粉の量も調節が必要です。

コーヒーをおいしく飲むため、コーヒーカップには熱湯を入れてカップを温めておきましょう。カップが冷たいとコーヒーをいれた際、温度が下がってしまうため、コーヒーをいれるギリギリまで温めておくのがポイントです。

(9)ケトル

沸騰したお湯を入れるためのポットを用意します。沸騰したお湯を入れられるものであれば、ヤカンでも電気ポットでも大丈夫ですが、コーヒー専用のケトルがあると、より喫茶店のような雰囲気を楽しめます。

2.下準備をする

器具をすべて用意したら、コーヒー抽出をするための下準備を行います。ここでは順を追ってその手順を見てみましょう。

(1)フィルターの準備

 1-1.布フィルターを流水でよく洗った後、固く絞って水気を切ります。

    1-2.固く絞った布フィルターの毛が立っている面を下(手の平に触れるように)にして、ろ過器にセットします。

  1-3.布フィルターに付いている紐を引っ張りろ過器に固定します。紐はしっかりと引っぱらないと、お湯が沸騰した際に蒸気が抜けてしまうので注意してください。ろ過器に固定する際の紐の結び方は蝶々結びがおすすめです。

     1-4.紐の結び目部分を布フィルターの内部にしっかりと入れ込みます。

(2)お湯の準備

コーヒーの粉は注いだお湯の2割を吸います。そのため、お湯の量は抽出量の2割増しです。例えば1杯あたりのコーヒーの粉を12g、できあがりの量を120mlとした場合、用意するお湯の量は120mlの2割増で144mlとなります。

(3)ろ過器のセット

   3-1.ろ過器から垂れているチェーンを下にしてロートの中に下します。

   3-2.チェーンの先にあるフックをロートの先端にひっかけてろ過器を固定します。

   3-3.竹べらを使い、ろ過器の位置を調整します。固定できたら竹べらでろ過器がロートの中心にあるかどうかを確認してください。

(4)器具を熱源にセット

   4-1.フラスコを熱源の上にセットします。この時、フラスコが濡れていると割れやすくなるため、しっかりと拭き取った状態でセットしてください。セットが完了したら熱源を使って温めを始めます。

 4-2.セットしたロートのチェーンをフラスコの内側に垂らします。フラスコの底部分からボコボコと泡が立つようになったら沸騰してきた合図です。

    4-3.沸騰を確認したら、ロートにコーヒー粉を入れます。粉の量は12gです。

3.コーヒーを抽出する

(1)コーヒー粉が入ったロートをフラスコの上にセットします。スタンドが倒れないようにしっかりと支えながらゆっくりとフラスコに差し込みましょう。

(2)ロートをセットすると、お湯がロートの方へ上昇してきます。それに伴ってコーヒー粉も上がってくるので、竹べらを使い粉を湿らせるように沈めてください。このタイミングでタイマーを1分にセットし、改めて竹べらを前後に動かしながら攪拌します。

攪拌していて、「泡・粉・液体」の3層になれば、上手く攪拌できています。  

(3)攪拌を続けタイマーが止まったら一旦火を止め、改めてぐるぐると回してください。上の層がだんだんと白っぽくなりますが、これはコーヒーの粉が持っているガスが出ている証拠で、抽出が終わったことを表します。

1回目の攪拌は抽出を促進させるため、前後に動かししっかりと攪拌してください。

火を止めた後の2回目の攪拌は、早くフラスコに吸引させる必要があるため、渦を起こすように攪拌します。

(4)コーヒー液がフラスコに落ち切り、ろ過器の表面に泡が残れば、理想的に抽出ができた状態です。時間でいうと50秒以内にフラスコにコーヒーが落ちるくらいが理想といえます。

(5)スタンドの背中部分を自分のお腹側にして、ロートを前後に揺すりパッキンの部分から中に空気を入れます。緩くなったら軽く回して引き上げてロートを外してください。カップのお湯を捨てて注げば、サイフォン式コーヒーのできあがりです。

サイフォンの洗い方

コーヒーをいれ終えたらサイフォンを洗います。器具を流水で冷ましたら、フラスコの下部分を先に洗剤を使って洗浄しましょう。スポンジを使い割れないように洗ってください。

フラスコの次はロートです。コーヒー粉を捨てた上で、ロートを洗浄します。そしてろ過器から布フィルターを取り外し両方を洗浄しますが、布フィルターは洗剤は使わず流水のみで洗浄してください。

すべてを洗い終えたらしっかりと乾燥させて終了です。なお、布フィルターは水に浸して冷暗所で保管し、次に使用する際も最初に流水で洗います。

抽出器具別 おいしいコーヒーのいれ方

抽出器具別のおいしいコーヒーのいれ方動画をまとめました。 毎日のコーヒーのいれ方のご参考にしてくださいね。

サイフォンを使っておいしいコーヒーをいれてみよう!

喫茶店でサイフォン式コーヒーを見て自分でもいれてみたいと思う方は多いのではないでしょうか。 ちょっと難しそうと思われるかもしれませんが、慣れてしまえばそれほど難しい工程はありません。本記事を参考に、ぜひご自宅でもサイフォン式コーヒーを試してみてはいかがでしょうか。

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