ペーパードリップやネルドリップ、サイフォン......。レギュラーコーヒーにはさまざまないれ方があることは知っている人も多いはず。でも実際のところ、どの方法がおいしくて手軽なのかは、相当のコーヒー通であっても詳しくは知らないのでは? そこで今回は、各抽出方法とメリットを合わせてご紹介します。まずはじめに、コーヒーが抽出されるメカニズムについて簡単に説明しておきましょう。豆の香味(味や香りの成分)は、温度差によってお湯へと移動し、コーヒー(液体)となります。もう少し具体的に説明すると、豆に凝縮した香味をお湯が溶かすというイメージでしょうか。冷たい水に溶けづらいというのは感覚で分かりますよね。それは、豆と水の間の温度差が小さいからで、香味が液体へと移動しづらいのです。それではここからは、さらに細かくそれぞれのいれ方の特徴を紹介しましょう。
超王道の抽出法ペーパードリップ。
ペーパードリップは、日常的にコーヒーをいれる人でなくても体験したことがあるのではないでしょうか。極端な話、ドリッパーさえあればできてしまうため、もっともカンタンな抽出法と言えます。ただし多少のコツは必要です。たとえばドリップの前に少量のお湯を注ぎ粉を蒸らしてアロマの噴出を抑えること。ポットから注ぐお湯はできるだけ細く一定の速度を保つこと。ドリップ開始から終了まではおおむね3分で注ぎ切ること。こういったひとつひとつの所作を守ることがペーパードリップにおいては大切なのです。
カフェチェーン店で流行したネルドリップ。
布フィルターを使用するネルドリップの語源は、柔らかい織物を意味する“フランネル”から。ペーパードリップと違い繊維が緩く、コーヒーの油分が抽出されやすいため、口当たりが滑らかでボディがしっかりとした味になります。また、ろ過のスピードがペーパードリップに比べて速いことから、少し粗めに挽いた豆でゆっくりと抽出するのがよいとされています。ただし、ネルのお手入れに手間がかかるのがちょっと難点。初心者はペーパードリップを入り口にして、慣れてきた方がチャレンジするのがいいかもしれません。
まるで実験器具!?サイフォン。
一杯のコーヒーをいれるための道具としては、なんともドラマチックなサイフォン。アルコールランプで下ボールのお湯を熱し、押しあがったお湯と上部にあるコーヒー粉を混ぜ、抽出する方法です。他の抽出方法に比べ、入れた瞬間の温度が高いことから香り立ちがよくなります。手順を覚えてしまえば、じつは見かけよりも難しくないため、味の再現がしやすいのも特徴です。
多くのバリスタもこだわるフレンチプレス。
スペシャルティコーヒーの流行で、注目を集めているのがフレンチプレス。豆の味を安定して抽出できるという理由から、スペシャルティーコーヒーを扱うカフェなどで、この方法にこだわるバリスタも多いのです。しくみは、ポットにコーヒーの粉とお湯を注ぎ、シャフトをセットしてコーヒーを抽出します。粉がお湯に触れている時間が長く安定するため、コーヒー豆の風味をダイレクトに感じられるのが特徴です。お湯を注いで待つだけというあまり手間のかからない抽出法のため、初心者の方でも簡単にコーヒーをいれることができます。
知っているとコーヒー通?なクレバー。
一見ふつうのドリッパーなのですが、構造がユニーク。ドリッパーの底に弁がついているため、お湯を注いでも液体が流れていかないのです。飲みたい量のお湯を注いだあとは3分程度蒸らして待つことで、しっかりと濃い味のコーヒーを抽出できます。サーバーにセットすると自動的にコーヒーが流れ出る構造は見ていても楽しいコーヒーです。まだまだ知らない人も多い抽出法なので、いち早く試してみる価値はあるかもしれません。
北欧が流行の発信地となったエアロプレス。
2005年に開発されたため歴史は浅く、圧力を使ったいれ方が特徴です。コーヒーの量や挽き方、湯量を調節するだけで火や電気を使わず、エスプレッソのようなコーヒーをいれることができます。北欧を中心に流行し、安定した味を出すことができます。屋外でおいしいコーヒーをカンタンに飲めるため、アウトドアグッズとしても活躍します。
バラエティを楽しむために自分の中の基準を。
基準をつくるためには、やはりペーパードリップがおすすめ。そしてひとつだけこだわるなら、ドリッパーは重要です。豆が持っているクォリティーをしっかりと引き出せるものを選んでください。キーコーヒーのクリスタルドリッパーは、高い技術がなくてもカンタンにコーヒーのおいしさを抽出できる構造になっています。見た目も特徴的ですが、ダイヤカット形状と呼ばれるドリッパー内部の凹凸が、コーヒーをゆっくりと最適なスピードでドリップする機能を果たすのです。つまり、豆の味をしっかりと引き出してくれる。これからレギュラーコーヒーを始める人はもちろん、すでにコーヒー通だという方にも、きっと差を感じていただけるドリッパーです。ぜひ自分の中においしさの基準をつくることをおすすめします。
透過法と浸漬法って知っていますか?
最後になりましたが、少しだけ抽出の“しくみ”に関する話を。これまで紹介したさまざまな抽出方法ですが、じつはしくみとしては大きく2種類に分けられます。それが、透過法と浸漬法です。透過法は、ひとことで言えばコーヒーの粉にお湯を注ぎ、ろ過する方法。少しずつお湯を注ぐことでクリアな味を再現しやすいのですが、注ぎ方によっては味がブレやすいため、よく言えば自分好みの味を探求できるといったところでしょうか。代表選手はペーパードリップ(一部は浸漬法)やネルドリップです。一方浸漬法は、コーヒーの粉を一定時間お湯に浸しておき、時間が経つと粉と液体を分離する方法です。誰がいれても安定して豆のポテンシャルを引き出せるいれ方です。しくみを知っておくことも、おいしいコーヒーをいれるコツのひとつです。
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